怖い話ではないかもしれないが、祖母から聞いた不思議な話

我が家は農村にあり代々農家として生活してきた。
我が家のすぐ近所には本家があり、本家もやはり代々農家として生計をたててきた。

そんな本家の庭に小さな祠が祀ってある。

子どもの頃から本家の庭に祠があることは知っていたが、いつからなぜ祠があるのかは聞いたことがなかった。

この前、実家に帰ったとき、ふとその祠のことを思いだし、祖母にたずねたことがある。

「ばあちゃん、そういえば本家の庭に昔から祠があるけど、あの祠はいつからあるの?」

「ああ。あれはね、かなり昔からあるよ。神様の石を祀った祠だそうだよ。ばあちゃんも、ここに嫁に来てから聞いたことだけどね」

祖母の話によると

―――江戸時代の話。あるとき、私の先祖が病気になったらしく、その病気がなかなか治らなかったらしい。困った先祖は、ある山に上り神様にお参りにいったという。

そのとき、先祖は神様のお告げを聞いたらしい。お告げによると○○山の頂上に行くと光り輝く石がある。それをお前の家に持ち帰って祀れば病気は治るというものだったそうだ。

先祖は神様の言うとおりに○○山に登った。頂上まで上り、光る石を探したが、見つからなかったという。諦めて帰ろうとしたとき、頂上の草陰が一瞬光り、そこに光る石があったという。

先祖はその石を見たとき、なぜか一瞬のためらいもなく、これが神様が言っていた石だとわかったという。さっそく石を家に持ち帰り、家の庭の一角に石を置き、しめ縄をしてお酒や芝を供えて祀ったという。

その後、不思議なことに先祖の病気は回復したという。

それから、本家では代々その石を神様の石として祀ってきた。

―――時は100年ほど流れて、昭和のはじめ。本家の家を新しい家に建て替えるため、大工を呼んで家の建て替え作業を始めたという。

その時、一人の大工が神様の石の上に大工道具をポンッと軽い気持ちで放り投げたそうだ。

次の日、その大工が仕事に来ないため、本家の人は大工仲間にその大工はどうしたか聞いたという。


すると「へえ。それが、あの大工は、昨日の夜急に死んだんですよ」と答えたという。


それ以降、本家では石を粗末にしたら大変なことになるといい、家の建て替え作業と同時に、神様の石も庭の一角に、祠を建てて、その中に移したそうだ。


そして、現在まで石は祠に祀られている。